今は昔かもしれやせんが、板場修行は洗い場から始まります。雑用に追い回されるので『追い回し』とも『アヒル』とも『ボウズ』とも言いやす。
どうにか包丁が立つ様になりましたら、揚場で揚げ物を任されやす。
それも形になりましたら、次に焼き場で、焼き物です。
これが『焼き方』
そして修行の末一人前と認められたら煮物を任されます。
これを『煮方』と申します。
煮方になるまで10年かかると言われてます。
その中間に前菜などを拵えたりする『八寸方』やお造り、刺身ですな、を引き受ける板場、『向こう板』『立て板』なんかがおりますが、
板場で一番偉いのが、『煮方』なんです。親方の次にですが。
その理由は、店の「味」を任されてるからですね。
『煮方』のトップが『脇板』または『二番』です。これはコックさんの『セカンド』と同じ。
まあ、以上は昔の話で、今これがきっちりしてるのは、ごく一部の厳しい店や一流の老舗だけですがね。
ことほど左様に煮物は難しいって話ですわ。
おかみさん方はどうですかい?
ブログ見て回ってますと、皆さんたいしたもんだ。立派な料理を公開なさってる。
煮物もさぞかし上手でしような。おいらの出る幕じゃねえかも知れませんが。
今日は、料理は基本と段取りが要だ、って話をします。
『家庭の煮物と料理屋の煮物は、どうして仕上がりが違うのか』

野菜の五目煮で説明しましょう。答えから先に言いますぜ
板前は、家庭でやるような「生から煮」を、絶対しないんですよ。
五目煮といえば、人参、蓮根、里芋なんぞの根菜類がつきものですが、これらはみな火の通りがそれぞれ違います。これを合わせて煮る時に、ご家庭ではまず別々にこしらえるって事をやりません。
これじゃ芋に火が通ったのに、大根には芯があるって事になります。そこで火の通るまで加熱したりするわけですが、当然形が崩れたり、味にムラが出来ちゃう。
これらの問題を回避する方法はたった一つ。
各材料を別々に下ゆでしておいてから、一緒に炊き合わせる。
『シンまでうま味がしみこんでいるのに、形は崩れていない板前の煮物』は、こうやって拵えます。
イモ類、人参、などは半ゆでで止めます。
型崩れを防ぐ為ですね。
蓮根やフキはアク抜きの手順を踏んで下さい。
大根、蕪、筍などは米のとぎ汁で完全に火を通してかまいません。
牛蒡は柔らかくなるまでゆでてもいいです。
青菜類は、鮮やかな緑がキモですんで、「色だし」して下さい。一気に塩ゆでして手早く冷水で熱を取ればいいです。シャッキっとした歯ごたえを残すためにサッと湯から取りだすのがポイントです。その後熱を加えないように。最後の仕上げで料理に添えます。
各材料の下煮が終わったら、合わせて味を含ませるんですが、この段階でグラグラ沸騰させたらすべてブチ壊しです。注意して下さい。
全部別々に下ごしらえするのは、面倒かもしれませんがね、これを一度やってみなせぇ、「ケタチガイ」の煮物が出来ますよ。

魚の煮付けのコツ
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