2013年06月04日

「イスラム型独裁国家はごめんだ」トルコ反政府デモ



トルコ反政府デモで男性が撃たれ死亡、全土の死者2人に  

トルコ南部ハタイ県で3日、反政府デモの最中に起きた発砲によって負傷した22歳の男性が、搬送先の病院で死亡した。

 デモ隊または警官隊からの発砲があったとの報道は今のところないが、反政府系の活動家らは、男性が抗議の最中に警察官によって頭部を撃たれたと主張している。

 医療関係者によると、イスタンブールで2日、デモ隊に突っ込んだ車にひかれた男性が死亡しており、ハタイで男性が死亡したことでトルコ全土に拡大している反政府デモによる死者は2人になった。
2013年06月04日AFP




トルコの首相、レジェップ・タイイップ・エルドアンが実権を握ったのは2003年である。

バランスのとれた「全方位外交」を展開し、西側諸国からの評判も良く、折からの経済発展もあって国内でもある程度の人気があることなどから、長期政権を維持していた。

しかし、エルドアンはガチガチの「イスラム主義者」でもあり、政権の長期化にともなってイスラム原理主義への回帰とも思えるような法案を提出するなど、徐々に「イスラーム色」を強めていた。


イスラム原理主義と言えば聞こえは良いのだが、他のイスラム諸国をみるかぎり、国体の実態は「独裁」である。

王族あるいは宗教指導者が政治の実権を握り、その連中が国の富を独占するというスタイルは、独裁と変わりはあるまい。

少なくとも、政権の交代が国民の意志によって行われない現実をみれば、民主国家とは程遠いと言わねばならない。

トルコはそのような周辺アラブ国と一線を画する国家であった。意外としっかりした民主主義が機能している唯一のイスラム国家だからである。


共和国の名で長く民主主義が続いたトルコの国民は、感覚的にヨーロッパ人と近く、他のアラブ諸国の専制政治に嫌悪感を持っている。

なのでエルドアンの「イスラム化」を快く思っていない。だからエルドアンが出すイスラム式の法案(たとえば女性のスカーフ着用を義務化するなど)に反対する国民が多数であった。


しかしエルドアンも10年目。権力を固めるには十分な期間であり、実際に大きな実力を身につけてもいる。

つまり、そろそろ「本性をあらわす時期」がきたと言えるかも知れない。

本性とは「イスラム原理主義」である。
厳格なイスラム法を導入し、国の姿を他のアラブ諸国に近づけたいのであろう。

考え方はどうあれ、手段と結果がどうであれ、それは「独裁国家」を目指すという事である。

トルコ国民は民主主義を手放す気はない。
軍も世俗的であり、いまさらイスラム式の国になることを望んではいない。

だから「アラブ色が強くなってきた」最近のエルドアンに対し警戒心が非常に高まっていた。



今回のデモのきっかけは「大規模な再開発工事に伴う木の伐採」であるが、当然ながらそのような理由は「ただのきっかけ」でしかない。

国民がデモを起こす理由はエルドアン首相のイスラム傾倒に対する不満。

そしてもうひとつ。
経済が好調なわりには、イスタンブールを始め各地で貧富の差が激しくなっており、仕事も少なく民衆のフラストレーションは高い。
「物価は上がって生活は苦しい
「景気がいいのは金持ちだけだ」
それが一般人の声だ。
(どこかかで聞いたような不満ですな)

その不満をよそに、巨大な橋の建設や空港の新設など「ハコモノ」の計画が進行(原発も同じで、地元民の不満は強い。それの手伝いをするのは日本。トルコ人の日本嫌いを増やすようものだ)

そしてオリンピック関連の再開発。
これがデモの引き金を引いたわけだ。


エルドアン首相はデモに対し、
「これは過激分子が組織した抗議運動」
「テロリズムと組んだ者たちに譲歩するつもりはない」


どうやら騒動は長引きそうである。
デモ隊の目的は「再開発工事」などではなく、エルドアン首相と彼のイスラム政党を政権から退かせること。

しかし「権力10年」のエルドアンが簡単に引くとは思えない。
権力は魔物であり、いかに民主主義の大切さを知っている人間であろうとも、長く居座ると腐敗してしまうし、「もっと長く権力者でいたい」と願うもの。つまり独裁に向かう。

彼らは再開発や「統制的法案」で、身内の財産と力を大きくしており(原発の利権もそう)、独占を広げている。そのぶん格差が広がり、貧しい国民が増大する。
民衆は怒り、民主主義の危機を感じている。
どちらかが引くまで争いは続くことになるだろう。

へたをすれば、内戦、あるいはクーデターさえ起きるかも知れない。その可能性も考慮しておくべきだ。



gyosan
posted by 魚山人 at 17:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事ニュース寸評 | 更新情報をチェックする